1 イントロダクション

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𠮷田政之

近畿大学経営学部

Published

2026/04/06

Modified

2026/04/14

1 講義の概要

1.1 講義の概要・到達目標

社会調査の目的・類型・プロセス等の概要を説明できる

  • 社会調査は広い概念です。個々の社会調査の事例を見てもそれが何かを理解することは難しいです(共通点が見えないから)
  • 今日、社会調査って何、という共通理解を作りたいです

統計解析用ソフトウェアを用いて基礎的な分析ができる

  • 講義のほとんどの時間は、社会調査の中でも定量的な調査を行う際の分析方法について扱います
  • 「分析ができる」というのにもさまざまなレベルがありますが、「基本的な分析手法を理解し、正しく運用できる」ようになることを目指します

1.2 この講義の位置付け

データ分析をするための基礎的知識を確認します

Note平均値

Aクラスのテストの結果は
100, 50, 30, 50, 40, 50, 40, 80, 30, 30 → 平均50点

Bクラスのテストの結果は
100,0,0,100,0,100,0,0,100,100 → 平均50点

  • 平均値50点とは何を意味している?
  • これを知って何に使える?
  • 同じ平均点でも、AとBでは全く違うような気もするけど?

分析をするための道具としてのRの使い方を学びます

  • 統計的分析は、エクセルでもできないことはない
  • でも専門のツールを使った方がはるかに便利
  • この講義では、データ分析に特化したプログラミング言語であるRを使います
Noteさっきの平均値はこんなふうに計算できる
Code
x = c(100, 50, 30, 50, 40, 50, 40, 80, 30, 30)
mean(x)
[1] 50
Code
y = c(100, 0, 0, 100, 0, 100, 0, 0, 100, 100)
mean(y)
[1] 50

データ分析の考え方と、実行方法を並行して学びます

2 社会調査?

2.1 定義

この講義では、 佐藤 (2015a, 31) に従い社会調査を

新しい知識や情報を得るために、システマティックに探求されるもの

として

理論的枠組みや先行研究を踏まえて適切な問いを立て、確実な調査技法を用いて良質のデータを獲得し、的確な方法で分析を行うことによって、問いに対する答えを導き出す(佐藤 2015a, 25)

プロセスとみます


2.1.1 新しい知識と情報?

  • 調査というものは、何かを知るために行われるもの
    • 新しい知見を得るために行われている
    • 特に社会的もしくは理論的に重要だけどわかっていない何かを明らかにしたい


2.1.2 システマティックに探求?

  • 社会科学の領域で広く認められた手順や方法を踏まえて調査する
    • 適当な方法では、明らかにしたいことがわからない
    • もっと酷い場合は間違った結論を出してしまうかもしれない

  • 社会調査とは、適切な方法で獲得したデータを的確な方法で分析することで、問いに対する答えを証拠を持って提示するもの

2.2 エビデンスの提供元としての社会調査

  • 社会調査によって得られたデータの分析結果は、国家・地方公共団体の政策や企業の経営判断に役立てられる(かもしれない)

いわゆる「目利き」はどれぐらい有効なのか?


データが集計されていないと、経験や勘に頼るしかない

  • 勘や経験も重要
    • 全てをデータ分析に置き換えることはできない
  • でも、データを蓄積して、それをうまく分析できたらより良い判断ができるかもしれない。
    • 世の中には、直感に反する関係がいっぱいある。良いと思って実行していたことが、実は逆効果だったり

  • しかし、調査の仕方がまずかったり、分析の仕方がまずいと誤った結果をエビデンスとして提供してしまう可能性も
    • 関係のないものを関係あると示す
    • 関係のあるものを関係ないと示す
    • 正の関係のものを負の関係として示す
  • 正しい社会調査を行えるようになりましょう

3 社会調査の流れ


社会調査は以下のような流れに従ってなされます

  1. リサーチ・クエスチョンの設定(問い)
  2. リサーチ・デザインの策定
  3. データ収集・データ分析
  4. 論文や報告書の作成(答え)

3.1 リサーチクエスチョンの設定

  • 調査の目的は、何かしらの新しい知識や情報を得ることにある
  • 社会調査は調査なので、何かしら調査するべき課題・疑問がある
    • まだわかっていないことの中で社会的もしくは理論的に重要なもの
Note例:オンデマンド講義は学習成果を高めるの?

メリット:好きなペースで進められる、何度でも復習できる

デメリット:集中できない、どうせ見ない

3.2 リサーチ・デザインの設定

  • 問いが定まっても、闇雲にアンケートを行えば良いわけではない
    • 問いに関連してすでにわかっていることは何かを把握する
      • 理論や専門知識、過去の調査結果
    • 問いの答えとその理由に関する仮説を立てる
    • データをどのように取るのかを検討する
Note例:オンデマンド講義は学習成果を高めるの?
  • 学習成果を規定する要因についてすでにわかっていることは?
  • 教室での学習とオンデマンド学習の違いは?

3.3 データ収集・分析

  • リサーチデザインに従って収集したデータを適切に分析して、仮説を検証する
  • 仮説の検証結果を根拠に当初の問いの答えを決める

Note例:オンデマンド講義は学習成果を高めるの?
  • オンデマンド学習の受講生の学習成果データ
  • 教室講義の受講生の学習成果データ

(ハイブリッド講義で講義内容が一緒だと良さそう。ただしオンラインか教室かは学籍番号で決められている設定じゃないと困る)

  • 分析の結果、教室講義の受講生の方が良い成績→教室講義の方が成果が高いと結論

3.4 論文や報告書の作成

  • 分析結果は(学術研究としてなら)論文、(コンサルティングや社内プロジェクトなら)報告書のような形でまとめられます。
  • まとめられた結果は多くの場合「これからどうするか」といった将来の意思決定に役立てられます。
Note例:オンデマンド講義は学習成果を高めるの?
  • 「教室講義の受講生の方が良い成績→教室講義の方が成果が高い」という分析結果を、問題意識や調査設計・データの概要とともに調査レポートとしてまとめる
  • オンデマンド講義の拡大の是非を検討する材料として利用

4 この講義でやること

4.1 データを使って分析の形を理解する

統計分析の背後にある理論は難しいです

  • 確率論
  • 計量経済学
  • 心理統計

理論を学んで分析できるようになる、に越したことはありませんが、理論→実践だと実際分析できるようになるまでにすごく長い時間がかかります

そこで…

最低限の理屈を、実際に分析をしながら学ぶ

を目指します

4.2 定量的データの分析方法を理解する

  • 社会調査の一連の流れには、たくさんの論点があり全てを15回で扱うことはできません

問いの設定や、リサーチデザインについては、例えば 佐藤 (2015a), 佐藤 (2015b), 伊丹 (2001) などが詳しいです。また、事例が経営学に寄っていますが、 田村 (2006), 須田 (2019) などもわかりやすいです。

  • 社会調査士プログラムの1講義として、この講義では定量的なデータの分析部分を中心に扱います
    • データの種類
    • データのまとめ方
    • 母集団と標本
    • 推定と検定
    • 回帰分析
    • 分散分析
  • これは、得られたデータからなるべく間違いのない結果を提示するための方法に関する部分です

4.3 プログラミング言語Rを使った分析方法の習得

  • この講義では、特に統計的な処理にRというプログラミング言語を使います
  • Rは特に統計分析に特化したプログラミング言語で、Pythonのような汎用性がない代わりに、統計的な処理に関わる機能や操作性が高いです
    • ただし、統計処理に関わる前後の処理も得意で、例えばレポートやスライド資料も作れます

4.4 この講義でのデータ分析の考え方

この講義では、ユーザーとしての統計分析方法について説明します(統計理論の証明等はしません)

車を運転するにあたって、

  • エンジンの仕組み内燃機関がどうたらこうたら、
  • ハイオクガソリンのハイオクとは?

は詳しく知っている必要はないですでも、

  • レギュラーガソリンで走る普通車にハイオクを入れても問題はないけど、軽油を入れたら壊れる
  • 一方通行の標識の意味

といった知識は運転するにあたって必要です。

統計分析でも、分析する上で

  • ガウス積分を使った正規分布の積率母関数の導出

は知らなくても支障はないけれど、

  • 統計的仮説検定の結果の意味
  • 分析上の仮定とその仮定が成り立たない時に起こる問題

等を知っていないと、間違った結果を計算してしまったりするという意味で問題です

この講義では、分析上の大きな間違い(プラスの関係があるものをマイナスと推定したり、関係ある(ない)ものを関係ない(ある)と推定したり)が起こらない程度の知識を得つつ、実際に分析作業ができるようになることを目指します。


Note生成AIについて

使い慣れておくに越したことはないので、この講義では各種生成AIを活用して構いません。

ただし、丸投げや頼りきりは避けてください。 学習者の観点からは、丸投げの不利益が報告されています

生成AIは常に正解を出すわけではありません。 指示した通りのものは作ってくれるかもしれませんが、意図を汲んでくれるとは限りません。ソフトウェアであれば、自分の欲した機能が付いてるかどうか触って確認することができます。一方で、分析方法や分析結果が自分の要求したものどおりになっているかは、コードを確認する必要があります。 そのためには、自分でもコードが読めないといけません。

この講義の内容であれば、AIからほぼ正しい出力が得られるでしょう。 課題も難なくこなせます。しかし、何が出力されたのかを理解しないまま終わらないでください。

コードを書くときは、AIを使わないか、使う場合は自分でも同じコードが書けると確信できる状態で提出してください。例えば、エラーの修正方法を尋ねるのは構いませんが、なぜ修正できたのかわからないまま提出しないでください。

考えの生成や整理、文章の推敲に活用するのは構いません。データを探したり、問いを一緒に練り上げるのも良い使い方だと思います。

5 講義の流れ

5.1 全体像

社会調査のプロセスのうち特に定量的分析部分を中心に、以下のような順番で進めます。

    1. 講義の概要とPosit Cloudの使い方
    1. 社会調査の基本
    1. RとPosit Cloudの基本的な使い方、データの種類
    1. データを要約する(1変数)
    1. データを要約する(複数変数)
    1. 統計的推測:母集団と標本
    1. 推定・検定
    1. 単回帰分析
    1. 重回帰分析
    1. 演習 1 (オンデマンド)
    1. 変数選択
    1. ダミー変数・交互作用・対数変換・2次の項
    1. 演習 2-1 (オンデマンド)
    1. 重回帰分析と因果推論
    1. 演習 2-2 (オンデマンド)
Note

講義の進捗度合いに応じて前後する場合があります

5.2 講義中

  • 講義中は、こちらからの講義と、(主に)Rを使った実習からなります

講義でやったことを

講義でやったことを

自分で実装

自分で実装
Caution

毎回パソコンを持ってきてください!

5.3 評価

講義中に何度か分析実習レポートを提出してもらいます。データ分析を伴うレポートを通して、講義で学習した内容の理解度及び分析手法の習得状況を問います

評価は以下の基準で行います

  • 講義中の実習 (70%)
    • 講義中・講義後課題への取り組み
  • レポート (2回) (30%)
    • 自身で問題を設定し、自身で得たデータを分析することを通して答える

6 課題

事前アンケート

  • Moodle+Rにあるアンケートにお答えください
  • 統計やプログラミング言語に対する経験を聞くものです
    • 講義進行の参考にします
    • 成績には影響しません

7 Rについて

7.1 Rとは

Rは、統計分析に強みを持つコンピュータ言語です。

エクセル Python R
便利さ 最悪 Rと同程度 まあ良い
分析の幅 非常に狭い 非常に広い 非常に広い
価格 すでに入っている 無料 無料
その他 そもそも表計算ソフト 機械学習やアプリ開発などにも 最近主流

7.2 他のソフト・方法との比較

  • 覚えさえすればエクセルよりもはるかに簡単
  • エクセルでできる分析は限られていますが、Rではそれよりもはるかに高度なことができます
  • エクセルはそもそも表計算ソフトです。
    • データが簡単にいじれてしまう(書き換えられてしまう)状態で分析作業をするのは好ましくありません。
  • フリーです。
    • 卒業後も使えます。
  • 機械学習との絡みでPythonが流行ってきています。
    • ただ、統計分析に関してはRに一日の長があるという印象です。
    • コンピュータ言語のとっかかりはRでも、Rを使えるようになったらPythonもそこまで負担なく覚えられるでしょう。

7.3 Rstudio (Posit Cloud)

Posit社の提供する統合開発環境(IDE)。

RはそれだけだとWindowsのconsoleとか、Macのterminalみたいな、コマンドだけの画面


これで使えないわけでもなけれど、もっと使いやすい方が良い。Rをもっと使いやすい状態にしてくれるアプリがRstudioです。

  • Rの画面(左下)
  • Rのプログラムを書くスペース(左上)
  • 読み込んだデータや、過去に実行したコマンドが見れるスペース(右上)
  • パッケージやファイル、作った図表などがみれるスペース(右下)1


  • Rstudioを使うと、分析結果レポートを文書やプレゼン用スライドに直接書き出すこともできます。
  • 文献リストの挿入などの機能も実装できるので、その気になればデータ分析から論文執筆まで全てRstudioでできます。

Google colabなど、他の開発環境もありますので、慣れてきたらお好みのツールを探してください。自分はVSCodeを使っています。

8 RとRstudioのインストール

ここから下の情報は古い可能性があります。

8.1 Rのインストール

  1. R の公式サイトに行くhttps://cloud.r-project.org
  2. 自分のOSに合ったものを選択
    • WindowsならDownload R for Windows
      • Base を選ぶ
    • MacならDownload R for macOS
      • SliconならR-X.X.X-arm64.pkg
      • IntelならR-X.X.X.pkg
  3. ダウンロードしたものを実行してインストール

X.X.X という部分はバージョン番号です。

Macの方で自分がどっちかわからない場合は、左上のマーク→「About This Mac」

8.2 Rstudioのインストール

  1. RStudio の公式サイトに行くhttps://posit.co/products/open-source/rstudio/
  2. 無料版(Open Source Edition)を選択
  3. 自分のOSに合ったものを選んでダウンロード
  4. ダウンロードしたものを実行してインストール

1. 右上のDownload RStudioボタン

1. 右上のDownload RStudioボタン

2. 真ん中左あたりのDownload RStudioボタン

2. 真ん中左あたりのDownload RStudioボタン

3. 右のDownload RStudioボタン

3. 右のDownload RStudioボタン

8.3 Posit cloudへの登録

  • 多様な機能を利用する場合は、RとRstudioをパソコンにインストールすることをお勧めします。
  • 一方で、個々人のパソコンの環境によってまれにうまくインストールできない場合等があります。
  • そこで、この講義ではPosit Cloudの利用を前提に話を進めます。
    • posit cloudはブラウザ(CromeとかEdgeとか)上でRstudioを動かすものです。

  1. リンク(https://posit.co/)からサイトへアクセスし、ProductsタブからPosit Cloudを選択する

  1. その後、進んだ画面で “Get Started” →Free planを選択し “Sign up” を押す

  1. 好きな方法でアカウントを作成する
  2. 登録が完了すると、自身のアカウントのホーム画面へ移動する。新しいR studio セッションを開始するためには、画面右上の New projectボタンを押し、“New Rstudio Project” を選択する。

参考文献

伊丹敬之. 2001. 創造的論文の書き方. 東京: 有斐閣
佐藤郁哉. 2015a. 社会調査の考え方 上. 東京大学出版会
———. 2015b. 社会調査の考え方 下. 東京大学出版会
田村正紀. 2006. リサーチ・デザイン : 経営知識創造の基本技術. 東京: 白桃書房
須田敏子. 2019. マネジメント研究への招待 : 研究方法の種類と選択. 東京: 中央経済社

Footnotes

  1. 4つのウインドウの配置は自由に変えられます。↩︎